社長日記

2018年年頭所感

皆様、改めまして新年明けましておめでとうございます。本年も変わらぬお引き立てを賜りますよう何卒よろしくお願い申し上げます。さて、今年の藤井絞は本日1月4日からの始動となりました。年末年始、長い冬期休暇を頂き、様々なことを考える時間がありました。昨年末のブログで2017年の総括も致しましたが、今年のテーマを何にしようかなと考えていたところ、ずっとはじめに浮かんできた言葉が【ブランディング】でした。近年「藤井絞のブランディングは?」とか「これからどこに向かうのですか」と聞かれることが多く、自分の中で整理する為にもこの【ブランディング】を今年のテーマと致します。

では、そのテーマに至った背景から始めます。「雪花絞」という技法で作られた弊社の綿麻浴衣が8年前にCMで扱われ、そのおかげで会社始まって以来の大ヒット商品となりました。それまでの弊社はメディアで取り扱って頂いたり、積極的にこちらからメディアに働きかけたりする会社ではありませんでしたので、CMで扱われることがこんなに影響があるんだと考えさせられる大きな事例でした。幸運以外の何ものでもなく偶然CMに使って頂いた浴衣によって、会社が大きく変わり始めました。その年、そして翌年から、全国の呉服店の皆様が目の色を変えて藤井絞に来られるようになりました。「この浴衣、藤井さんの商品ですよね。分けてもらえませんか」とか「うちのお客様に藤井絞で売ってるから買ってきて欲しいと言われました」など、お客様から考えられないような有難いご注文をあちこちで頂きました。いわゆる「指名買い」です。古くからのお得意先様、そして新規の呉服店様、両方の動きで商売は活性化し、大きな恩恵がありました。今振り返りますと、幸運と感謝しかありません。そしてこの経験が藤井絞の【ブランディング】に取り組むきっかけとなりました。当時はTwitterが流行っていて、Facebookが出てきて、弊社もHPを開設しブログを始めた頃で、以前の情報のスピードと全く違う速さでものが伝わり、届く体験をしました。SNSが急速に発達し、やる気のあるきもの業界の方々やきもの好きな消費者の皆様と繋がるようになりました。藤井絞の情報を広く深く伝えることが出来たことは、間違いなくSNSがあったからです。万人が見ることが出来る為、見せ方や伝え方を思慮し、画像や言葉によって藤井絞をどのように魅せるかに取り組んだことが【ブランディング】を意識した経緯です。

近年浴衣を中心とした発信で、まず藤井絞が知られることについては成功致しました。ビジュアル的に分かりやすいこと、素材に関する利点、そして弊社で一番廉価な商品であり絹に比べお求めやすいことなど理由は様々ですが、藤井絞が浴衣のメーカーだと思われることが増えました。結果、そのことの良し悪しが出て来たことも否めません。元来、絹の絞り染めしかしていなかったメーカーが、綿麻や綿の絞り染めで名を馳せてることがよろしくないという風潮も出てきたように感じます。しかし、弊社にとっての浴衣の売上は伸びてると言いましても全体の4分の1に過ぎません。藤井絞の屋台骨はあくまでも絹のきものや帯なのです。次はそのことを広く知って頂きたいと思い、また新たな藤井絞の【ブランディング】に取り組もうと考えました。そしてそれはたいへんおこがましいですが、伝統的工芸品であります『京鹿の子絞』の未来を創る為でもあります。今までは愛知県の伝統的工芸品の有松鳴海絞の技術であります「雪花絞」で名を知られ感謝しかありませんが、これからは『京鹿の子絞』の認知度を上げていくことが、新しい【藤井絞のブランディング】に繋がると信じています。その【ブランディング】を通じ、より認知度を上げ、より皆様へ選んで頂ける商品を作るメーカーになることこそが『京鹿の子絞』の未来を創る一助になるでしょう。そしてそれは仕事を生み出すことに繋がります。無論、弊社の仕事だけですべての職人の方々の仕事を護ることは出来ませんが、技術を継承する礎にはなりたいと考えています。幸い浴衣がヒットしたことにより、近年絹の数倍の量の仕事が浴衣に展開出来るようになりました。現在、京鹿の子絞の職人の平均年齢は70歳前後になっています。この素晴らしい技術を数年後に継承する為にも、浴衣に『京鹿の子絞』の技術を今までよりたくさん施し、新しい職人を育てる道を創りたいと考えています。新しい方々に、学びたい、仕事としてやってみたい、挑戦したいと思って頂く為には、魅力のある仕事として認めてもらうしかありません。その為にも京鹿の子絞と藤井絞の【ブランディング】が必要なのです。

私が藤井絞に入社して今年で20年目の年になりました。すべてが順風満帆だったとは申しませんが、皆様のご支援や信じられない運、様々なものに護られ、今があります。次の20年を創る為、今まで皆様から頂いたものをすべて駆使し、これまで以上に全力で取り組む所存です。私は一流ブランドや本で指南しているような高尚で戦略的な【ブランディング】は出来ません。そして特に勉強もしておりません。ただ、きものに関してはセオリーが通用しにくい世界だと感じています。ですのでどなたがどんなことを仰ろうと、どこまでも藤井絞らしく、そして自分らしく【藤井絞のブランディング】を構築したいと思っております。そうは言いましても不勉強ですし、自分では分からないこと、感じないことも多々あると思います。その為には皆様の温かい御指導、ご意見が必要です。是非、皆様のお力をお貸し頂きたく、伏してお願い申し上げます。

最後になりましたが、数回伺った居酒屋の店主から新年に頂いた年賀状を披露致します。
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数年後も数十年後もずっと職人さんに感謝される会社でありたい。これは第三者が聞かれた話しですが、ものすごく有り難く、そしてプレッシャーにもなりました。藤井絞がものを作れる訳ではなく、あくまでも卓越した職人の方々の技術に支えられ、今日があります。私たちが職人さんに感謝してもしきれません。職人さんの思いを受けてこれから藤井絞がすることは何か。それは仕事を創る、安心して続けられる仕事量を確保すること。すなわち藤井絞の商品が売れるようになることなのです。その為の【ブランディング】なのです。【ブランディング】を通じ、弊社が今後どのように見えるか迷いながら、もしかすると間違った方法で展開するかもしれませんが、たくさんの方々に支持され、選択して頂ける【藤井絞ブランディング】を考え皆様にお伝え出来れば、未来を創ることが出来るのではないでしょうか。その日を信じ、本日より始動致します。今年も変わらぬご愛顧を賜りますよう何卒よろしくお願い申し上げます。

藤井絞株式会社 藤井 浩一

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