今回は藤井絞の浴衣についてです。
私が会社に入った13,4年前は、有松・鳴海絞りのメーカーから絞りの浴衣を仕入れ、全国の呉服店に
卸していました。いわゆる買い継ぎ、問屋業です。
毎年、1月に有松に赴き、たくさんの商品の中から、当社向きの商品をセレクトして仕入れをしていました。
しかし、伺っているうちに、年々メーカー在庫や、新作がみるみる減っていきました。
もちろん前年の売れ行きと、新作の納期、在庫数等、さまざまな問題があったことと推察されます。
当社側にも同じ商品で他社と価格の差が出たりして、不具合が生じるようになってきました。
『このままでは夏用に販売できるものが無くなる』と考えだしたのが、約8年ほど前です。
そこから、『藤井絞オリジナル浴衣』の本格的な取り組みが始まりました。
まず、生地の製作からでした。やはり『涼しい』ことが大前提で、綿麻にこだわりました。
様々な綿麻を試し、ようやく綿麻が約6対4の比率で織ったものが出来上がりました。
綿麻は絹と比べて、染料、柄、色等、すべて違うので、手こずりました。
最初はほとんどが京都の職人さんによる加工でした。
本当に試行錯誤を重ね、平成18年2月に数10反、発表致しました。
18年の夏に、『雪花絞』との出会いがありました。有松で唯一の雪花絞職人、張正さんと出逢ったのはその頃でした。
見た瞬間、『すばらしい!』、『絶対やろう』と思い、『必ずヒットする』と確信がありました。
今まで綿100%にしかしたことがない『雪花絞』を、藤井絞の綿麻に試作してもらいました。
今までの生地と染料の浸透度が違い、最初は難物率が高かったり、綿ほどキレイに出来上がらなかったりで、
苦労しました。しかし、張正さんの研究と努力のおかげで、すばらしい浴衣が出来上がりました。
その後、19年の『七緒』の表紙に出て、一躍脚光を浴びる浴衣になりました。
21年の『金麦』CMで『壇れい』さんに着て頂き、本当に雪花絞の生産が追いつかない状況がここ2、3年です。
張正さん、わずか一軒で、1反1反すべて手仕事で作っているのですから、生産数が限られるのも当然です。
作る職人さんがいない為、スクリーンなどで染めた雪花絞も出てきてますが、真似をされるということは
ヒット作の証ですね。
ここからがポイントですが、、藤井絞の浴衣はオリジナルの綿麻素材、『備長炭入り綿麻』、『綿麻紅梅』、『綿麻』の
3種類のいずれかを使用しています。
4、5年前に、上記3種類の綿麻素材を開発し、『着やすい、涼しい、手入れがしやすい』と、暑い夏には
もってこいの浴衣です。
私も無地か立巻き絞りか縫い締め絞りかですが、それぞれの綿麻で浴衣を何枚も作っておりまして、
着心地が良く涼しいことと、洗濯機で(ネットに入れて)洗える手軽さ、扱いやすさは他のきものにはない特徴です。
実際に自分をはじめ、社員全員が着て体感しているので、圧倒的な説得力になると思います。
基本は『自分が着て良いかどうか』を最重要視しております。
きものを着ない人には、生地の良し悪しや質感などの判断は難しいでしょう。
藤井絞は実体験に基づいて、『着心地、着やすさ』に重点を置いている数少ないメーカーです。
夏のきものですが、絽や紗のきものは、よほど着る目的がある方でないと、必要度が低いでしょう。
藤井絞の浴衣は、浴衣としてはもちろん、夏きものの入り口としても提案しております。
襦袢に浴衣、夏帯に帯締め、帯揚げ、足袋を履けば、本当に涼やかな夏ものとしてお召し頂けます。
最近のきものや浴衣の特集でも、そのような着こなしは多いですね。
当社の浴衣はそのように着ていただくと、より着こなしの幅が広がり、夏が楽しくなると思います。
紙面や画面では表現出来ない、『藤井絞の綿麻浴衣』のよさを、是非体感してみて下さい。
価格以上に価値があることをお約束致します。